うたかたの日々

第8話「交換条件のお食事チケット」

 ちょうど昨年の10月1日から、私は今のアトリエを正式にまるっと借りることになった。

一人では、十分すぎるスペースを、しばらくの間借りる事を渋っていた。

何がきっかけなのかがどうにも思い出せないのだが、私はこの場所を借りる事になったのだ。
普段、仕事をする場所は私のアトリエである。
私のアトリエにはもちろんキッチンがある。ロフトがあり、大きな階段がある。階段には飽き性の私が退屈しない様にと、お気に入りの本が一段ごとに並べてある。

階段を上ると、中段付近に突然孔雀の剥製が現れる。

あまりにもアトリエに馴染みすぎて、きっとあまり気付かないと私は思うのだが、存在感が大きすぎるのと、ギャグっぽいのでみなさん気付かれるようだ。

ただ、私に関してはこの置物が置いて行かれたことに気づくのに数日かかったのだが…

この置物を置いていったのは、ちょんまげがチャームポイントの友人「シゲチョイ」

友人達は、「ちょんまげのシゲチョイ」と呼んだりもする。

ちなみに、法律的には明治維新以降、ちょんまげは法律違反らしい。

シゲチョイがアトリエに遊びに来た際に、置き土産で置いていったのか?忘れていったのか?いらなかったのか?とにかく、孔雀の剥製はなんだかこのアトリエにしっくりきていて、私が引き取る事となった。

シゲチョイの職業は世の中から無駄をなくすため、世界をよりよくするためにリサイクルショップ&不用品回収業をしている。

世の中の無駄をなくすのと、世界をよりよくするというのは彼の言葉である。

要するに「足るを知る」ということである。

シゲチョイはちょいから商店というリサイクルショップも営んでいるのだが、私が欲しいものが入荷した際に連絡が来るようにお願いしているので、頻繁にではないがたまに連絡が来る。

「あっちゃん例のブツ入ったぜっ」

こんな具合にだ。

そして、例のブツを拝見して気にいると、私のお食事チケットが交換条件でその例のブツを手に入れる。

このやり取りは、私とシゲチョイの信頼関係だからこそ成り立つものなのである。
そんなシゲチョイのお食事チケットのメニューを今日は紹介します。

「ポークステーキのディナープレート」
<材料>
あらかじめ皮付きのまま茹でておいたジャガイモ1個
ナス 1本
ししとう 5本
豚ロース 2枚
付け合わせのサラダ(グリーンリーフ、ルッコラ使用)適量
自家製ポルチーニソルト 適量(乾燥ポルチーニ20g、塩60g)
オリーブオイル 適量
胡椒 適量
バルサミコ酢 50cc

<作り方>
1 ポルチーニソルトを作る。乾燥ポルチーニをミルミキサーでよく混ぜる。塩60gと共に混ぜ合わせて完成。乾燥ポルチーニはできるだけ細かい方が良い。ジャガイモは皮付きのまま4等分に切る。ナスは縦に3箇所皮をむき、2cmほどの厚みで斜めに輪切りにし、ボウルに水を張り3分ほど付けおきしアク抜きをする。その後、水気をキッチンペーパーでふき取る。
2 大きめのフライパンを強火で熱しオリーブオイルを大さじ3ほど入れ、中火にしジャガイモ、ナス、ししとうを並べポルチーニソルトを適量振るう。野菜の両面に焼き色がつくまで加熱する。菜箸やトングで触れてみて、ししとう、ナスが柔らかくしんなりしたら器に盛り付ける。
3 豚肉の両面にポルチーニソルトをふりかける。2のフライパンにオリーブオイル大さじ2をいれ豚肉を焼く。いったん取り出し、バルサミコ酢を入れ軽く煮詰め、豚肉を入れ戻してバルサミコ酢をからめる。
4 先に盛り付けたナスの上に3の豚肉をのせる。付け合わせのサラダを添えて完成。

さあ召し上がれ。

このお料理のポイントは自家製ポルチーニソルト。お塩に乾燥ポルチーニの粉末を混ぜるだけで、すべての食材が素材の味を生かしながら美味しくなってしまいます。ポルチーニの旨味が塩分を控えめにしてくれるので、心も体も満足の魔法のお塩なのです。

ちなみに作りたてよりも、一晩寝かすとさらにお塩に香りが行き渡り美味しくなります。

そして、一人暮らしのシゲチョイが一人でも自宅で同じように作ることのできる簡単で美味しいメニューなのです。

いかがですか?男性の方でも作りやすい一皿でありますように。

今日はこのへんで…

おやすみなさい。ごきげんよう。

11月の空席情報

本日で10月のお料理教室は終了致しました。
ご参加下さいました皆様、誠にありがとうございました。


11月の空席情報です。

11/13月曜
午前の部ー空1席

11/14火曜
午後の部ー空1席

11/15水曜
午前の部ー空1席

11/17金曜
午後の部ー空1席

11/21火曜
午前の部ー空2席

11/22日水曜
午前の部ー空1席(満席となりました)
午後の部ー空1席(満席となりました)


 他のお日にちは全席満席となっております。(※開催日11/13日ー20日)

初めましての方も、いつもいらして下さる方達にも、皆様にお会いできるのを楽しみにしております。

お料理教室でお会いしましょう。

第7話「淑女のデザート」

 私の仕事はレシピを考えることがほとんどなものだから、ほとんどの時間は頭の中で何かしらを考えている。ということは、場所はどこでもいいのである。

ただ、とても面倒くさい事に一人っきりになり食べ物とは全く関係のない、とてもロケーションの良い場所でリラックスして考えないと何の発想も浮かばないという性分なのである。

一皿がひらめくのは、突然やってくるのである。

それは、ぼーっと夜空を眺めていて、突然流れ星が目に入った時の様な。
もしくは、突然謎の飛行物体を目撃した時の様な衝撃と感動の様な。

ちなみに私の地元では、謎の飛行物体の目撃情報が多いのであります。

お話は前に戻りますが、私はこの時のことを「お料理の神様が降ってきた」と表現します。

お料理の神様が降ってくると、お口の中で思いついた一皿の味がしてくるのです。

そして、思わず大きな声で「美味し〜い!!」と言わずにはいられなくなるのです。

そんな、お料理の神様が降りてきた時の一皿のご紹介です。

桃の季節、終わってしまいましたが….

マスカルポーネムース 〜モモのスープ仕立て〜
<材料>
卵黄 2個
甜菜糖 30g
牛乳 100cc
ゼラチン 5g(熱湯大さじ2)
マスカルポーネクリーム 125g
生クリーム 80cc
—桃のコンポート—
桃  2個
水 3cup
てん菜糖 180g
—桃のスープ—
プレーンヨーグルト 100g
桃コンポートの煮汁 大さじ2
桃コンポート 1個半(残りはカットして飾りに使用)

飾り用ブルーベリー 適量
<作り方>
1. 鍋に桃のコンポート用の水、てん菜糖を入れ加熱し甜菜糖を溶かす。沸騰したら中火にし桃を入れ10分加熱。更に桃をひっくり返し10分加熱。鍋のまま冷えるまで待ち、冷蔵庫に入れ冷やす。
2. 牛乳は沸騰しない程度に温めておく。卵黄とてん菜糖を白っぽくなるまで良く混ぜ、その中に温めた牛乳を少しずつ注ぎその都度良く混ぜる。
3. 2を鍋に入れ火にかけ、底をこそげる様に混ぜながら加熱してとろみを付ける。この時沸騰はさせないようにする。戻したゼラチンを加えよく混ぜ、冷水にあてゆるいとろみが付くまで混ぜる。
4. ボウルにマスカルポーネクリームを入れて混ぜる。その中に2を少しずつ注ぎながら更にまぜる。
5. 7分立てした生クリームを3に少量ずつ入れ切り混ぜ合わせて生クリームをなじませ、一つになったら冷蔵庫で冷やし固める。

冷えた1のシロップと皮をむいた桃の果肉、ヨーグルトをブレンダーで良く混ぜスープを作る。器にスープを入れ、ムースをのせカットした桃のコンポートをスープに浮かべる。飾り用ブルーベリーをのせ完成。

さあ召し上がれ。

 ちなみに、こちらは私が自身のお料理教室を始めた時に最初に来てくださった鈴木様と松岡様のために考えたお料理。

味も、見た目もとても品のあるお二人の様な淑女のための一皿。

来年の桃の季節にぜひ皆様おためしくださいませ。

Don't know why

 夏が終わった。秋の始まり。

ある日突然、私の世界から色がなくなった。

桜が満開の並木道を見るだけで、欲しいものなんて何もない、これだけでいいと思えるような日々を過ごしていたのにだ。

太陽の光を浴びてきらめく青葉を見ても、何の感情も湧いてこない私がいた。

これはどうにも様子がおかしいぞと思い始めて私は私を観察するようにした。

その理由、原因は至って簡単なことだった。

人はとても些細なことから自分の世界の色を白黒にしてしまうことがわかった。

こんなことってあるのだなぁと冷静な私がそこにはいて、最近の時間系列と共に沸き起こった感情の整理整頓をしていくことをした。

それには、沢山の友人の助けを結果必要とした。

色のない世界の中で沢山の良いアイデアが浮かんだ。

これから数年かけてそれを実現させる為の行動をしようと思えてきたのだ。

そうこうしているうちに、私の世界に色が戻ってきた。

些細なことで始まった白黒の世界は、些細な事で色が戻り、それは以前にも増してより彩りが多い人生になりそうな予感がある。

今日はこのへんで…

本日も良い一日。

おやすみなさい。ごきげんよう。

第6話「HAPPY BIRTHDAY TO YOU」

10月8日は私の父のお誕生日なのである。

実は、私は父親のお誕生日をずっと間違えて記憶していた。
それに気づいたのは、今年の8月のことなのであるが…

私はこの38年間、ずっと10月18日が父のお誕生日だと思っていたのである。

とんだ大間違いにこの歳になって気付いた言い訳は山ほどあるのだが、とりあえず…

お父さんごめんなさいと、心の中で思うのである。

私の父はオシャレが本当に大好きで、幼い頃からいろんなブティックによく連れて行ってもらった。

昔から良く行っていたブティックがあるビルの地下には、父親のお気に入りのイタリアンレストランがあった。

薄暗い階段を降りたところにあったためか、私は怖くて行きたがらなかった。

父はそのブティックに行くたびに、そのレストランのナスのチーズグラタンが美味しいんだなぁ〜。と言っていた。

ナスが美味しい季節になると、父が嬉しそうにその事を言っていた事を思い出す。

今日は、そんな父のために考えた一皿のご紹介です。

「お父さんの大好きなナスのグラタン」
<材料>
exヴァージンオリーブオイル 大さじ2+大さじ2
なす 4本
トマト缶(ダイスカット) 1缶
玉ねぎ(みじん切り) 1/4個
ニンニク 1片
バジル、ローリエ 2枝、1枚
塩 2つまみ
ステッペンチーズ(ピザ用ミックスチーズ) 適量
小麦粉 適量
パン粉 適量
黒胡椒 適量
イタリアンパセリ 適量
<作り方>
1. 玉ねぎ、ニンニクはみじん切り。ナスは3ヶ所皮をむく。1cm幅で斜めの輪切り。ナスは水に5分ほどさらしアク抜きし水気をふき取る。両面に小麦粉をまぶし、exヴァージンオリーブオイル大さじ2で両面を焼いておくバジルは手でちぎっておく。イタリアンパセリはみじん切り。
2. トマトソースを作る。鍋にニンニク、exヴァージンオリーブオイル大さじ2を入れ弱火で加熱する。ニンニクがキツネ色になったら玉ねぎのみじん切り、塩を入れしんなりするまで炒める。トマト缶、バジル、ローリエを入れ半量になるまで煮詰める。
3. 耐熱容器にナス、トマトソース、ナス、トマトソース、チーズ、パン粉の順にのせ200度で余熱したオーブンで15分加熱する。仕上げにイタリアンパセリと黒胡椒をちらし完成。

さあ召し上がれ。

こちらのお料理は、トマトソースを作る際、玉ねぎのみじん切りとともにベーコンやソーセージを一緒に炒めると、さらに旨味がアップして美味しいのですが、野菜だけで作ってもとっても美味しい出来上がりなのです。

そして、まだ子供だった私は、そのイタリアンレストランでナスのグラタンを食べたのですが、猫舌すぎて、実はあまりちゃんと食べれませんでした。遠い昔の曖昧な記憶を頼りに作った今回の一皿、秋茄子の季節ももう終わりですが、ぜひみなさんお試しくださいませ。

お父さん、お誕生日おめでとうございます。

今日はこの辺で…

おやすみなさい。ごきげんよう。


第5話 「心躍る季節」

 一年のうちに9月末から10月にかけて私の心躍る季節がやってくる。

アトリエを抜け出して、近くの公園が私のアトリエになるのだ。

そのためには幾つかの条件がある。

まずは大きな木がある事。

そして、ブランケットを広げて寝転んでも体が痛くならないようなある程度の芝生がそこには生えている事。

もう少し欲を言えば、ある程度広い公園である事。

そして、過ごしやすい陽気である事は絶対条件なのである。

持ち物はお気に入りの厚手で大判のブランケット1枚、お気に入りの小さなクッション、ストール、飲み物、グラスかマグカップ。

飲み物のための器はとても重要だ。

その場の雰囲気を一気に素敵に演出してくれるのである。

プラスティックや紙のカップではダメなのだ。

軽食、PC、今読んでいる本、サングラス、iphone&イヤホン。これは音楽を聴くためだ。

つばの広いお気に入りの帽子。

帽子に関しては、眠たくなった時に顔にかぶせて寝るためのものと言って良い。

さて、ここで重要なのが飲み物と軽食なのである。

時間がないときは、ガス入りの水とフルーツでいいのだが、時間がある時はサンドイッチやクッキー、入れたての紅茶などがあればとても充実したひと時が過ごせることは確実なのである。

ここで私のオススメの軽食メニューの紹介です。

「人参のラペとハムのサンドウィッチ」
<材料>
人参 4本(1本約150g)
塩 小さじ1/2
ロースハム 8枚(ベーコン、生ハムでも良い)
バター 適量
マヨネーズ 適量
食パン 8枚
—調味料A—
りんご酢 大さじ3
exオリーブオイル 大さじ2
マスタード 大さじ3
メープルシロップ 小さじ1
りんご(皮付きのまますりおろす) 1/2個

<作り方>
1. 人参をピーラーでそぎ、塩をまぶししばらく置く。(約30分)水分が出たら良く絞る。時間がない場合は、塩をまぶしたらよく手で揉み解すと、あっという間に水分は抜けますよ!
2. ボウルに調味料Aを入れよく混ぜ、その中に1の人参を入れ混ぜる。
3. トーストした食パンにバターとマヨネーズを塗り、2の人参とロースハムを乗せ、食パンで挟む。包丁で食べやすい大きさに切り分ける。

さあ出来上がり。

あとはこれを梱包して、すべての必需品をバスケットに入れて移動するだけ。


ちなみに人参のラペは、保存がきき、サラダの上に乗せて食べても良いので保存食にはオススメの一品です。

さて、準備はいいですか?

そろそろ出かけましょうか?

あなたのお気に入りの場所に。

今日はこのへんで…

ごきげんよう。良い午後を。