うたかたの日々

記憶

 この季節になると思い出す出来事はたくさんあるのだけれど、特にカモミールの花が咲き始める頃になると思い出す出来事がある。

 カモミールは白と黄色の可愛らしい小花の植物だ。

花の部分を摘み取り乾燥させてハーブティーにもできるのである。

心を落ち着かせ、リラックスした気持ちにさせてくれるカモミールティー。


大きな花瓶に飾ればお花畑にいるような気持ちになる。

私の好きな花の一つだ。


 今日はある春の日にやってきた来客者のお話。


私のアトリエにはいたるところに生花が飾ってある。

買ってきたものもあるが、ほとんどは畑や自宅の庭、山や川辺で自らとってきたものばかりだ。

建物の中にいても旬を感じてもらえるようにと考えている。

 その客人はアトリエにたくさん飾ってあるお花の香りをクンクンとそれぞれ丁寧に嗅いでいた。

どうやらお花のことはさっぱりとわからない様子だが、美しい物や、良い香りのする物がきっと好きなお方なのだろうと察した。


あまりにもクンクンと嗅いでいるので、いい匂いがしますか?と、話しかけてみた。

お花に近づけた顔を上げて、私の方に向けた時だった。


一生懸命嗅ぎすぎたためか、カモミールの黄色い花粉が鼻の頭についていた。


とても微笑ましい出来事と、子供の様に真剣に観察する様が、とても真面目な方なのだろうなぁと思えた。

日常の些細な事でも丁寧に、いつまでも子供の様な探究心を持ち続けていたいなぁと心から思える出来事だった。


今月のアトリエにもカモミールを飾った。


これからもカモミールを見るたびにあの時の客人の事を思い出すのだろう。

穏やかな春の記憶。

Posted by あっちゃん 日記

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