第11話「憧れの人」
こうありたい自分になるために、私に影響を与えた大人が何人かいる。
今日はその中の二人のご夫婦のお話。
私はかずちゃんの自宅に初めて行ったときの事を本当によく覚えている。
子供ながらにとても居心地の良いその家に私はよく行くようになった。
まだ私が18歳の頃に、骨董器収集の趣味を持っているかずちゃんは、素敵な古伊万里を見つけたということで、一品づつ、まるで懐石料理のようにおもてなしをしてくれたことがあった。
器やしつらえも素敵だったのだが、オーディオマニアのご主人がとても良い音でアナログレコードをかけてくれた。その食事会は、憧れそのものだった。
音楽、器、お料理、照明のトーン、気の合う仲間たち。
沢山の良い要素が集まると、ただの食べる行為が更に素敵なものへと変化することを自宅でしていることに感動した。
子供の頃から父の影響でジャズが好きだった私に、かずちゃんのご主人はとても良い音でジャズを聴かせてくれた。
おじさんは、近所迷惑にならない場所で、好きなジャズを大音量でかけたくて相当な山奥に家を建てた。
かずちゃんの家にお泊まりをした日の朝は、遠くの方からジャズの音色が聞こえて目覚める。
とても大きなスピーカーからは体を包んでしまうような大きな音で音楽が聞けるが、音が綺麗なので嫌な感じがしなかった。
そんなかずちゃん夫婦に影響されて、私も大人になったらかずちゃん夫婦のようになれるといいなぁ…と思った。
そして、かずちゃん夫婦からおもてなしする素晴らしさを教えてもらった。
私の好きな事は沢山あるが、子供の頃から変わらない好きな事と言ったら、誰かを喜ばす事。
これは、私の喜びでもあるんだなぁと最近は思えるようになった。
月日が流れ、私がお料理の道に進むきっかけを作ってくれたかずちゃんは、なんと私のお料理教室の生徒さんになったのだ。
今日はかずちゃんがお教室で習ったお料理で、かずちゃんが特にお気に入りのレシピのご紹介です。
春菊のサラダ(4人分)
<材料>
春菊 1束
プチトマト 8個
—調味料A—
太白胡麻油 大さじ2
胡麻油 大さじ2
—調味料B—
リンゴ酢 大さじ2
てん菜糖 小さじ1
塩 2つまみ
胡椒 適量
<作り方>
1. 春菊は葉の柔らかい所と、茎の部分を別々にしておく。長めの葉は手で半分にちぎる。茎の部分は斜めに薄くスライスし、水で洗いザル上げしておく。プチトマトは1/2にカット。
2. ボウルに調味料Bを入れ泡立て器で、てん菜糖と塩を混ぜとかす。その中に少しずつ調味料Aを入れ混ぜる。この時なるべく手早く混ぜ油と水分を乳化させる。
3. 大ボウルに1で水切りした春菊とトマトを入れドレッシングをかけ良くあえて完成。
さあ召し上がれ。
冬場に春菊といえば、鍋の定番ですがサラダで頂いても本当に美味しのです。
かずちゃんはもう、このお料理は食べることができないけれど、このお料理はかずちゃん、あなたに捧げます。
かずちゃんと山で植物採取ができなくなるのが本当に困ったことですが、私はかずちゃんがいなくても大丈夫なようにこの1年間で準備ができたように思います。
一人でも、頑張れるように一年一年、亀のスピードでブレずにこれからも頑張ります。
そして、強く生きます。
沢山の思いと、愛を本当にありがとうございました。
大好きなかずちゃんへ。
心からの愛をこめて…
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